燻製|厚切りで頂く、豚肩ロースベーコンづくり

キャンプ料理について考えること

 日々の調理では、美味しさ×効率性が大きなニーズだと思う。仕事や家事、多くの人が、たくさんのことをしなくてはいけない中で、いかに手間をかけず、美味しい食事にしていくか。そこでは”失敗しない”ことも必要だ。それができれば、ゆとりができ、家族と過ごす時間や、個人で楽しむ時間が生まれてくる。

 一方、私がキャンプでの調理で大切にしたいのは「プロセスを楽しむ」だ。手間や時間をかけても、調理工程1つ1つ楽しむことで、その料理を育てていく。仮に、失敗したとしても、プロセスが楽しければ、それも思い出になる。

 もちろん、全ての効率性を排除したいわけではない。その時のキャンプの状況や、日程、メンバーなどによって、バランスを考えていく。それも1つの楽しさだ。

 その中で、最も手間がかかる調理の1つが、「燻製」だ。ラボリエでは、様々な燻製をトライしていきたいと考えている。

燻製に選ぶ食材

 「燻製」は、決して特別な料理ではなく、日常でも食している。そんな、日々食べている燻製料理の1つに、「ベーコン」がある。スーパーマーケットでは、完成し、カットされた状態で販売されているが、どうやってつくられているのか。そう考えると、興味がそそられる。

 また、多く市販されているベーコンは、豚肉で、部位はバラ肉だ。せっかくならば、いつも食べているものとは違うベーコンをつくってみたい。

 そこで選んだのが、「豚肩ロース」のベーコン。ショルダーベーコンと呼ばれているものだ。

 こちらが、その豚肩ロースのブロック肉。約400g。ツヤツヤだ。

 これをベーコンにしたら、どうなるのだろうか・・・。

燻製前に仕込む1週間

 このブロック肉を買うのは、燻製日=キャンプ日の1週間前だ。もし土~日曜にキャンプに行くのであれば、前週の金曜日に買い、調理をスタートする必要がある。

① 砂糖をまぶす & ソミュール液づくり:1時間

 まず、全体に砂糖をまぶす。三温糖など、色付きの砂糖がオススメ。

 そして、キッチペーパーに包み、冷蔵庫で1時間ほど置く。砂糖は、粒子が大きく、それが最初に食材に入ることにより、その後スムーズに味が染みるそうだ。

 その間に、「ソミュール液」をつくっていく。水:200cc に、塩20g、砂糖10gを入れ、ひと煮立ちさせる。そして、しっかり冷ましておく。

② ソミュール液に漬け込み:5日間

 1時間後、ブロック肉をさっと洗い、キッチンペーパーで水をふきとってから、スパイスをまぶしていく。ローズマリー、タイム、ペッパー、鷹の爪、シナモン、ローリエ、クローブ、・・・家にあったハーブをほぼ全種入れた。

 これを肉に擦り込む。この時に、フォークで肉を刺し、穴をあけておく。

 そして、タッパーに入れて、ソミュール液に漬け込み。玉ねぎとニンニクのスライスも入れておく。

 これで、冷蔵庫に入れて、5日間待つ。

③ 塩抜き:10時間

 5日ぶりのご対面。色が少し変わっている。

 ここで、ボールに入れた水につけて、塩を抜いていく。氷を入れて温度を上げないようにしつつ、冷蔵庫に入れておく。数時間おきに水を取り替える。手間はかかるが、しっかり塩を抜かないと、仕上がりがしょっぱくなる。個人的には、健康的に、少し薄味の方が好きだ。

④ ピチットシートで脱水:1~2日間

 ここで塩抜きしたブロック肉を、「ピチットシート」に包んで、冷蔵庫に入れておく。

 ピチットシートとは、食品を脱水してくれるシート。燻製には必須の商品だ。水分があると、燻煙に含まれる成分と、水が反応し、酸味やえぐみ、苦みが出てしまう。いかに、きちんと乾燥させるかがポイントになる。このシートを使えば、短時間で乾燥できる。また、干して乾燥させるるのと比べ、空気に触れないため衛生的にも安心だ。

 そして、これにて、仕込みは完了!

 うまくタイミングを合わせれば、この冷蔵庫に入れたタイミングが、キャンプ前々日か前日になる。キャンプ当日は、このままクーラーボックスに入れて、持っていく。

キャンプで燻製!

 キャンプ場で燻製をしていく。1泊2日のキャンプであれば、「着いて準備をできたらすぐに」燻製スタートすることを心がけている。ここからまた、美味しく食べるために、時間が必要だからだ。

 今回選んだのは、林檎のスモークウッド。スモーカーにセットして燻製していく。

 2時間ほど燻製したものがこちら。

 燻製時に、やっておくこと、主に2点だ。

  1. スモークウッドに肉の脂が落ちないよう、間にホイルをしくこと
  2. 燻製中に、肉の表面に出てきた脂や、スモーカー内の水滴を拭き取ること

 それ以外は、特にすることはないので、他の料理をつくったり、お酒を呑んだりなど、自由な時間を過ごせる。

燻製完了!だが、食べてはいけない!

 ここで、すぐに食べたいと思うが、ここで食べても、実は全く美味しくはない。この段階では、煙のトゲトゲしさが強く、食材の美味しさと薫香がバラバラになっている。

 肉をラップで包み、クーラーボックスに入れて寝かせる。これにより薫香が落ち着き、食材と馴染んでいく。キャンプ場に到着後、なるべく早くスタートした方がよい理由は、この寝かせる時間を少しでも確保するためだ。

 どれくらい寝かせるか、、、美味しく頂くには、一晩は必要だ。つまりこのベーコンは、翌日の朝食がターゲットになる。

 とはいえ、せっかくなので、夜、ウイスキーやワインとともに、つまむのはアリだ。軽く炙って、チビチビ頂く。この時点ではまだ薫香がトゲトゲしい。それを貴重な経験として愉しみつつ、お酒に酔う。贅沢な時間だ。

いよいよ、厚切りで頂く朝食

 二日酔いの中、実食だ。

 ナイフで、厚切りに、

 フライパンで焼いて、

 卵を投入!そして調理完了!アツアツのうちに頂こう。

 肩ロース肉は、バラ肉と比べ脂身が少なく、厚切りにすると柔らかい肉の食感と旨味を楽しめる。なんとも、贅沢な朝食だ。

 そもそも燻製は、1万年以上も前の石器時代に生み出された、食品の保存性を高める知恵だ。現在では、美味しい調理法としても進化してきたが、もともとの保存食としての役割も重要なポイントとして残っている。

 今回つくった燻製豚肩ロースベーコンは、、、、完成して、30分以内に食べ終わってしまい、「保存食」としての役割は果たすことはなかった。・・・次回は、もっと多めにつくろう。

 これだけ時間をかけてつくったプロセスは十分に楽しく、その味は格別だ。

<今回使用したギアはこちら>